「商売なんて簡単だよ」
開業税理士でお客様に税務のアドバイスをする私がこんなことを言ったら、大抵の経営者の方からは顰蹙を買うことでしょう。
でも、私は税理士業だけでなく、アレコレ商売もやっているビジネスオーナーです。なので、このように語る資格はあるはずです。
友人などから「凄いね」と言われる際には、適当にこのように語っていることが多いですね。
でも、私も本当は、
「商売は簡単ではない」と思っています。
それでも、商売についてわかっていることがあります。それは、どんな商売でも基本原理は至ってシンプルであること。これだけ押さえていれば、難しいビジネス書なんて読まなくてもだいたいうまくいく。
その基本的な原則とはたった一つ。
「十分な粗利があること」
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粗利がなければ事業にならない
・・・まぁ当たり前ですね。
でも、これって結構深い、重要な話なんです。なので、これをもう少し分解して説明してみることにします。
まず、粗利というのは、例えば100円で仕入れた商品を110円で売れた場合の、差益の10円の事ですよね。さすがにこれがわかっていない経営者の方はいないと思いますが、念のために説明を加えましょう。
これは「物」を売る商売でなくて、「サービス」業である場合は、仕入の代わりに人件費の時給で考えればOKです。つまり、売上から仕入れ、または人件費を引いた差額であるものが【粗利】です。これがマイナスなら話になりません。
さすがに、これは説明しなくても良いですよね?
売り上げ方がわからなければ商売にならない
次に、そもそも【売上】とは何ぞや、も改めて考えてみたいと思います。
売上は、商品の単価に数量を掛け算して決まりますよね。つまり、「売上=単価×数量」なわけですから、これを踏まえて2つの視点を加えて考えてみれば、【売上】に対する課題も見えてくるわけです。
① 数量(ボリューム)の視点で考える
さっきの例だと110-100=10円しか利益が出ません。
10円儲かったってしょうがないじゃないかと思われるかもしれませんが、それならたくさん売ればよいのです。ただ、それだけ。つまり【薄利多売】でも、1億円売れれば、1千万円の利益(粗利)が残ります。
たくさん売れないもので粗利が小さいなら、そんなもの、やめちゃえば良いのです。というより意味ないのでさっさとやめましょう。粗利がでかいなら少しの販売数量でも良いけど、粗利が小さいなら当然たくさん売れるものでなければダメなのですよ。
これには商売開始のとっかかりとなるドアオープン商品(※)などの戦略的な例外はありますが、【粗利】を意識するだけで、やるべきことはかなり絞られてくるはずです。儲けの薄いところでいくら頑張っても仕方がありませんから。
(※)訪問販売などでとりあえず「扉を開けさせる」ための、サービス商品など
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② 単価(粗利率)の視点で考える
さっきの例の中で、売価が110円でなく120円になったり、商品仕入代金が100円ではなく90円だったりしたらもっと儲かりますよね?
100円-90円=10円だったのが、120円-90円=30円。頑張って売り上げを3倍に上げなくても、これだけで3倍の儲け【粗利】になります。
最近は、インターネットもすっかり普及してしまって、情報の共有化、拡散のスピードがほぼリアルタイムになったことで、”特別なレシピ”などの情報によって、世間を出し抜くことは非常に難しくなりました。
少なくとも、大手の豊富な資金力以外でオープンになっている情報から十分な利益を取りだすことはまず無理です。誰でも「ググれば」ある程度出てきちゃいますから。
そこで、資金力に限界のある中小企業や個人事業主は、「どうやったら高く売れるか」、「どうやったら安く仕入れられるか」、そこが勝負となってきます。
儲けたけばコネを探せ
『そんなんわかったら苦労しないだろ』
いえいえ、コレ、そんなに難しい話ではないです。一番簡単な例は、「コネ」。例えば、自分の出身地の特産品だから「仕入れのツテがある」、「相場が分かる」。家族や友達が社長をやっている会社が「安く売ってくれる」。
自分の仲間や経歴から使えそうな材料はありませんか?
あなたが一生懸命生きてきたのなら、絶対に何かあります。一生懸命頑張ってこなかったのならば、これから頑張って”ツテ”を探すしかありません。
これが、ビジネス書でいうところの「強み」の本質です。
どうです、できそうでしょ?いや実際、できますよ。いや、やってください。やりましょう、そう、やるしかない。
「仕入の相場が100円のものを俺なら90円で仕入れることができる。」「売値の相場が110円のものを私なら120円で買う人を知っている。」
これができたなら、後はボリュームの話だけになります。
売れる数量が少なければ副業にとどめておけば良いし、十分な利益になるのなら一念発起して独立したってよいのです。
後は、自分の見込みが正しかったのかどうか、こればかりは結果論になります。
「やってみなけりゃワカラナイ。」
お互いに頑張りましょう。