我ながら税理士業って、なかなかいい商売だと思っています。
これ、ほんと。
なぜなら、私のことを全然知らない人でも、勝手に「まじめ」だとか「頭がよい」、しまいには『お金持ち』みたいなイメージを持ってくれるからです。
ある程度気分はいいし、資格を持っている社会的信頼性があるため、初見の打ち合わせなどでも、相手も一目置いてくれて、仕事はやりやすくなります。
資格に固執するとリスクを取らなくなる
…ところが、実際の私は、リスクの取りすぎでカツカツ状態です。
うっかりすると、投資不動産の固定資産税のスケジュールを忘れて、税理士なのに滞納が発生する始末。
ホント情けないお話ですね。もちろん、すぐ払いますよ。それこそ消費者金融に走ってでも。税金滞納していると、借入できないし…。(そっちかよ!)
税理士が恐れる『資格はく奪』
でも、このイメージこそが税理士、というより資格の強みそのものだと思っています。
私だって、
「私の職業は、医者です!」
と聞けば、少なくとも猛烈に頭はいいだろう、医学部に行けるくらいには実家が金持ちなんだろうと想像します。
同じように、弁護士でも警察官でも、職業それぞれにイメージというものはついて回ります。その中で税理士は、そこそこ有利なポジションであることは間違いないと思います。
しかしながら、今回はそんな税理士業の落とし穴について、あえて語っちゃいます。
税理士に限らず、堅い商売の弱点ってなんだと思いますか?それは、他でもないその『資格そのもの』なのです。
- 時間もコストもかけて、やっと取った資格という思い入れ
- 実際に表面的な資格だけで社会的信用が得られるという事実
- 各種資格を規制する法律による行政罰の規定
そういったものが積み重なって、税理士は税理士資格を失うことをものすごく恐れるわけです。裏を返せば、それがきちんとブレーキになるからこそ、信用が得られているわけでもあります。
「元税理士」になる恐怖とリスク
ところが、
このように堅い商売ほど、「元」がついたら即死になります。
「元」税理士…。
「絶対何か金絡みの悪いことやったんだろ?」
って普通、思いますよね。
実際になぜ「元」になってしまった理由はわからないのに、今までのプラスイメージが逆転して、かえってマイナスイメージになるのです。税理士からすると、これは怖い。
でも、その結果、もっと怖いのは、リスクの取り方をはき違えてしまうこと。これです、今回はこれが言いたい。違法な事をやるのはもちろんダメです。私だってそんなことはしません。
でも、合法なもので、なんら違法性はないなのに、ミスすること自体を恐れて”勝負しない”ことになってしまうのであれば、これはちょっと違うと思うのです。
保身・怠惰のために提案しない者は、プロではない
税理士は、節税の事でお客様と議論したってまず負けません。
なので、お客様が分からないからと、例えばグレーゾーンではあるけれど、認められている有利な提案があったとしても、自分のリスクにはなるから、勝負しない(提案しない)場合があったとします。
それでお客様が離れてもやっていける税理士なら、それはその税理士個人の経営方針なのかもしれないので、それはそれでよいのかもしれません。
ただ、「プロとしてどうなんだ」と思います。
条件整えればやれる節税があって、お客様のニーズに応えるために、それがベストだと分かっているのに、「面倒だから」「やったことないから」「税務署と議論になるから」、やらない、提案しないって、それはおかしいでしょ。
できないならできないでもいいですが、そんならそれでお客様に言うべきです。
『怖いからやりたくない』って。
知っているのに知らせない、やれそうな気もするけど怖いからやらないってのは、やはりそれは専門家としてダメだと思います。
…熱く語ってしまいましたが、みんながそんな税理士だと言っているわけではありません。ただ、資格に固執するあまりに、そのような「可能性がある」ということは、頭に入れておいても損にはなりません。
やっぱりコミュニケーションが大事ですね。
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偉そうなこと書きましたが、そういう私もやっぱり資格はなくしたくはないです。税理士資格を取った時は、親も泣いて喜んでましたし。
ただ、プロである税理士としては、やっぱり「お客様のために勝負をしたい」とは思っています。で、勝ちたいんです。自分の為にも。
難しいなぁ。