法人成り(ほうじんなり)。または、法人化(ほうじんか)。
自営業やっていると時々耳にする言葉だと思います。具体的には、今まで個人事業主だったものが、法人に移行すること。
もちろん、いきなり法人設立することもできますが、個人事業主でやるのとどのように違うのでしょうか。今日は個人事業と法人の違いについて、掘り下げてみたいと思います。
個人事業主と法人の違い
個人事業主はどこまでも「個人」です。
でも「法人」になると、いわゆる会社になり、法律的には自分と会社は別物になります。両者の違いはたくさんありますが、特にお金や仕事に関係ある個所を中心に話を進めていきます。
<違いの出る項目>
① お金の自由度
② 設立と維持のコスト
③ 社会保険
④ 信用力、イメージ
⑤ 節税
① お金の自由度(個人事業主〇法人)
まず、お金の自由度の観点から。
個人事業主にとってのお金は正直、自由です。つまり、仕事のお金とプライベートのお金の区分があまりありません。例えば、事業資金を使い込んだとしても(銀行がどう思うかはともかく)、税金的には問題になりません。
一方で法人の場合は、会社のお金はあくまで会社(法人)のお金です。社長は法人から給与として支給された額や、立替えた経費の精算以外では、お金をおろすことはできません。理由もなく勝手にお金を使ってしまうと、理屈上は『横領』となります。
なので、自分の生活費などのために、どうしてもお金を会社から借りるような場合には、”利息”を支払わないといけなくなります。そしてその際には、貸借対照表という会社の経営状態を示す表において、社長という個人へお金を貸し付けた、『貸付金』として計上されることになり、銀行からの評価がガタ落ちします。
「社長が、お金に困っていて会社の銀行口座からお金を引き出して何かに使っている!!」
ってことになりますからね。
そんな会社に、銀行側もうかうかと融資したくはありませんよね。
よってお金の自由度の点では、個人事業主でいた方が気楽なことになります。
(法人の場合でも、初めから必要生活費などを考慮して給与(役員報酬)の額を決めればよい話ですが、この話はまた後日にします)
② 設立と維持コスト(個人事業主〇法人△)
まず、設立費用のお話。
個人事業主は「開業届」という紙切れ1枚出せば、即日開業できます。
最近は屋号での銀行口座を作る場合には、「開業届」の提出を求められることがほとんどです。なので、今後の為にもきちんと出しておいた方が良いです。
(開業届を出さないで個人事業を行っている人もいます)
一方で、「法人設立」にはお金がかかります。
設立のためには、合同会社なら約10万円、株式会社なら約25万円のお金がかかります。会社の種類の違いについてはここでは置いてといて、とにかく作るだけでお金がかかるわけです。
また、引越の場合などで住所などが変わった場合では、個人事業では住所変更を届け出る「異動届」を提出すればそれで済みますが、法人の場合は、わざわざお金を払って「登記」を変更した上で、「異動届」を出さなくてはいけません。
これが結構面倒くさいし、内容によっては金額もバカになりません。
あとは、税金の話。
事業が赤字の場合の税金は、個人の場合0円です。
一方で法人の場合は、たとえ赤字であっても、最低でも7万円の均等割という税金が毎年かかってきます。
それから、税務申告のための顧問料の話。
個人事業場合の確定申告は、なんとか個人(社長自身)でもできないことはないです。それに税理士を頼んだとしても、その顧問料は法人契約よりは安いことが多いです。
一方、法人の決算申告は自力ではほぼ不可能です。なので、税理士を入れることになり、普通は年間30~50万円の支出は覚悟しないといけなくなります。
(小規模・零細事業の場合は、もっと安いサービスもあったりします)
このように、設立や維持のコストは圧倒的に個人事業主の方が安いんですよね。
ここまでの話だと、個人事業には結構メリットがあることが分かっていただけたでしょうか。でも、本当は状況を見ての使い分けが必要になります。
次回には、引き続き次の項目にも触れていきたいと思います。