「売上と粗利」
以前、商売で重要なのは「粗利」だということを書きました。
これはもう、当たり前というか不変の原理です。
なので、私は基本的に「粗利と比べて売上は大して重要ではない」とさえ思っています。
売上と粗利どちらが大事なのか
例えば、同じ業種で、同じ商材、同じ粗利であった場合、
①売上1億円、原価7千万円、粗利3千万円の会社と、②売上5千万円、原価2千万円、粗利3千万円の会社があった場合に、①と②の会社、どちらの方が『良い会社』だと思いますか?
売上高 | 原価 | 粗利 | |
会社① | 1億円 | 7千万円 | 3千万円 |
会社② | 5千万円 | 2千万円 | 3千万円 |
【粗利はまったく同じ!】
これは明らかに②が正解となりますが、あなたが「社長」ならば、なぜかはわかりますよね。
業種・商材・粗利は同じ条件ですが、会社②の方が単純に粗利率が良いからです。この例だと売上の大きさには全く意味がありません。
年商(売上)にひれ伏す人は、経営が分かっていない人!
「マネーの虎」という番組が昔ありました。
現在20代の若い社長は聞いたことがないかもしれませんが、私のように30代半ば以上の方であれば、聞いたことはあることでしょう。
マネーの虎は、歴戦の社長達が、起業希望者のふにゃふにゃのプレゼンを斬る!みたいなTV番組でした。実際に出資まで行くのは、本当にたまーにしかありません。あれは起業希望者もどうかとは思いますけどね。
あの番組での社長の紹介にはその、『年商』が使われていました。
「社長A、飲食店〇〇を全国にチェーン展開、年商○○億円!!」
みたいな感じです。
でもね、さっきも言ったように全く意味はないんですよ、年商なんて。実際、マネーの虎に出ていた社長達はその後いろいろあったようです。(ここでは触れませんが)
繰り返しになりますが、大事なのは売上ではなく粗利で、さらに言えば利益の方です。もちろん、会社にとって、超機密情報である利益を、わざわざテレビで公開するわけにはいかなかったのかもしれません。
それでも、少なくとも番組製作者は『年商』がその社長の箔になると考えたので、そういう肩書を付けたのでしょう。
そう思った製作者も、そう思われている視聴者も残念です。売上なんて、やろうと思えば赤字で商品をばらまいての”ドーピング“だって簡単なんですけどね。
「銀行には銀行の理屈」を理解すると借りやすくなるかも
それでも、売上が単純に役に立つケースもあります。
それは、ナント超重要な「融資」の現場なんです。
具体的には、他の条件が同じだとしても、売上が大きい方がお金を借りやすくなります。こっちの方はたとえ粗利が同じでも、売上が5千万円よりは、1億円である方が、明らかにお金を借りやすくなるのです。
銀行は、銀行の理屈で動いています。
銀行の社会的存在意義は「国民のチャレンジの後押し」だと私は勝手に思っていますが、銀行の方では、その建前は保持しつつも、お金を貸すためにいろんな理由を求めます。
それはいい会社だからとか、儲かっているからとか抽象的なものではなく、決められたルールでの審査をパスしたから貸す。これなら、誰も責任を取らなくて良いですもんね。
例えば、ある融資を希望する会社があったとします。
この会社は、商売としては黒字だけれども、売上の回収までの期間が長いので、先に経費の支払期限が来てしまうから売上の2か月分貸してほしいとか、新規出店のために設備投資しても売上が水準に達するのは何か月後だからお金が必要ですとか、そういう具体的な理由が銀行は好きなのです。
融資を希望されたことのある事業主の方なら、
「御社の借入金の限度額は、月商の何か月分です」という表現を、担当税理士や銀行担当者などから聞いたことがあるかと思いますが、それはこれが理由です。
なので、売上よりも粗利が重要という原則は理解しつつも、銀行独自の理屈も頭に入れながら決算書の着地をコントロールしたいところです。
そうすると、だんだんと融資を受けやすい決算書やタイミング、事業計画書がイメージがわいてくるはずですよ。