「飲食店をつぶした話①」
前回、ダメな借金について書きました。
「余裕をもって破産する」なんて書きましたが、
「税理士風情が机上の空論を偉そうに・・・」
って思われる方もいることでしょうね。
でも、私にはその気持ちが分かります。なぜなら、私自身借金をしてリスクを取り、勝負をしているからです。まったくの根拠なしに語っているわけではありません。
今回はそんなお話のきっかけとなる飲食店をつぶした時の話。実在の人物に関係ある話なので、あまり詳細は書けませんが、すべて事実に基づいています。
税理士が飲食店をやってみた
私の本業は税理士ですが、税理士業にこだわらず事業を進めています。
その中で「飲食店」は一度はやってみたいと昔から考えていたことでした。
ただし、業態にも何も特にこだわりはなく、一人でやるのではなく仲間と一緒に立ち上げ、自分は得意な経理のポジションにでも納まれば良いと考えていました。
そのスタンス自体は今もあまり変わっていません。
「ここは自分の店だ!」
と言ってみたいという見栄が半分。
税理士らしくない税理士という看板に説得力を持たせるため、人を招待しやすい飲食店を持つのがうってつけに思えたのがもう半分です。
そんなイメージを温めていたところ、ある日の飲み会で親しくしているお客様の社長2人と話が盛り上がったのです。
そして、「じゃあ、やってみようか」となりました。
飲食店のコンセプト
お店の出資者は全部で3人で、それぞれの役割は以下のような感じです。
一応、事業に必要だと言われる人(ヒト)・物(モノ)・金(カネ)を割り振りました。
【人・本業・飲食店での役割】
①私…代表者/税理士・経理、総務、融資担当(カネ)
②A社長…飲食店経営・店舗、人事、運営担当(ヒト)
③B社長…美容系経営・調達、マーケティング担当(モノ)
コンセプトは、
「A社長の飲食店の空き時間を利用して、実質居抜きで安く別業態に挑戦してみよう!」
3人とも本業があるため、『時間を取られず手間もかからない方法』が必要でした。その結果、大儲けできないことは百も承知で、「赤字でさえなければ問題ない」「ダラダラやっていこう」ぐらいのノリで事業プランは立てました。
初期投資額は、安く済みました。A社長の店の設備をそのまま使えるため、設立費用や採用コスト全て合わせても、50万円くらいでオープンまでこぎつけることができました。
飲食店を「居抜き」でなく、通常一から始めようと思ったら、500~1,000万円(都内ならもっとかかります)は覚悟するところです。
そのため、このようにコストを抑えられたことは、かなりのアドバンテージのはずです。一方で、A社長の店の営業時間外を利用する事業なため、次のようなデメリットも生じました。
・営業時間の縛り
・メニューの縛り
・セキュリティの縛り
楽しくて甘い飲食店経営計画
それでも、飲食店経営の経験のない私からすれば、「(コストの)リスクを抑えられる」事の方が魅力的だったのです。
3人ともこの事業に生活がかかっているわけではないので、損益分岐点も月間の売上50万円くらいの低めの設定となりました。
オープン費用がたった50万円。
損益分岐点が月間売上50万円。
売り上げは、仮に1週間に5日営業したとして、毎日2.5万円程度の売り上げでトントンにはなるわけですから、簡単に達成できそうな数字です。
それぞれ本業があるから、損益分岐点さえ超えてくれればいい。
「なんて楽な商売だろう!」
と思っていました。その頃は…
とくに3人で集まって相談をしているときは、子供の時に秘密基地を作った時のようにワクワクでした。
酒を酌み交わしながら計画を立てているとき。
調査のためにあちこち飲食店を回っているとき。
バイトの採用で履歴書を回し読みしているとき。
それはそれは、楽しい時間でした。
しかしながら、そんな夢のある時間は、オープンまでがピークだったのです。
【続く】