飲食店オープンから倒産までのよくあるかもしれない話②

飲食店経営
夢いっぱいで始めた飲食店が倒産となってしまうかもしれない話の続きです。

前回までは、念願のお店オープンにこぎつけた山田太郎さんが開店1週間で、忙しいながらも希望のある充実した日々を送っていったところまででした。

さて、どのようなことが起こるのか、これから飲食店を始めようと考えているような人は、厳しい目で事業プランを立てる際の参考にしてみて下さい。

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【1~4ヶ月目】オープンラッシュが終了

最初の売上げの勢いも、1ヶ月経過もするとだいぶ落ち着いてきました。

オープン後の4ヶ月目までの月売上を平均していみると、だいたい150万円くらいとなります。経費の内訳としては、家賃15万円・仕入45万円・人件費40万円・水道光熱費10万円、それに借金の返済が10万円に、その他雑費が5万円。

開店の月と比べると、売り上げが減ったせいで材料の仕入も60万円→45万円と抑えられたことにもなり、費用の合計は約125万円でした。

初月は60万円で喜んでいた手取りは、25万円になってしまいました。

でも、これならまだサラリーマンの時代ととさほど変わりません。

暇になったらなったで、人件費を削ればまだ余裕はあるし、また売上が上がれば、すぐに取り返せるはずです。5年たったら借金もなくなるので、そこまで踏ん張れば、この売上のままでもサラリーマン時代と大差はありません。

問題なく維持できる範囲です。

生活費に月25万円くらいはかかるため、手取りの25万円も資金を増やすことにはつながりません。なので4ヶ月経過時点で、一時は順調に増えていくように思えた資金も、オープン時点の700万円に戻ってしまいました。

それでも、まだまだ減ったわけではないし、やる気は満々です。

【5~8ヶ月目】初月の成功体験を思い出し『まだいけるはず』

5ヶ月目から8ヶ月目には、じりじりと、さらに売上が下がってきました。

原因は何だか分かりません。

店頭でクーポンを配っても、メニュー変更しても、ポイントカードを作っても、どうにも反響がないのです。常連客の中には「美味しいよね」と週一で通ってくれる人もいるため、味も悪いとは思えません。

この現状を打破するために、『値段を下げる』のは最終手段だと分かっているので、まだ怖くて手を付けられません。

5ヶ月目から8ヶ月目までの売上の月の平均は120万円でした。

経費は、家賃15万円・仕入35万円・人件費は少し削って30万円・水道光熱費10万円。そして借金の返済が10万円・その他雑費5万円の合計105万円

生活費ぐらいは稼げていた手取りは、15万円となってしまいました。

月収は明らかにサラリーマン時代より下がってしまいました。生活費としても足りませんが、まだ手持ち資金で耐えられるので、奥さんに相談する必要もなさそうです。

会計データを見てもらった担当税理士からは、

「このままだとまずいですよ」

と言われましたが、

「このままだとまずいなんて事は、見ればわかるだろ!」

「数字だけ見て、お前に現場の何がわかるんだ!」

と思うと腹が立って、税理士の事が嫌いになってしまいました。これ以降、税理士からの連絡には、のらりくらりとかわすになります。

また、自分はこんなにキリキリと胃を痛くして頭を悩ませているのに、気づかないでのんきにも見える奥さんにもイライラしてきました。

山田さんの家での機嫌も悪くなってきたせいか、家族の雰囲気も良くありません。

この時点で、事業資金というか貯金は600万円にまで下がってきています。今までの生活費ベースなら少し減り方は緩やかだったはずですが、独立直後の浮かれた人づきあいがやめられず、交際費がかさんでいると思われます。

でも、税理士ときちんと連絡を取らなくなってしまったので、山田さんにその認識にはありません。

売上げを上げるためには交際費も重要だろう、という理由で、本来なら自分の店のお客様とは関係ないはずの、羽振りの良い社長同士の付き合いにお金もかかるのです。

だんだん、通帳を見るのも嫌になってきました。

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【9~12か月目】辞めたくてもやめられないプライドと悪循環

そして1年が経過しました。

9~12か月目の平均売上は、とうとう80万円まで下がりました。

経費の内訳は、家賃15万円・仕入25万円・人件費はさらに削って15万円・水道光熱費10万円・借金の返済10万円。その他雑費が5万円の合計80万円です。

ついに通帳は増えなくなり、生活費で足りない分だけ毎月持ち出すようになってしまいました。融資で受けた500万円からの借金は、まだまだ残っているのに、貯金は450万円となっています。

人件費カットのために山田さん自らシフトに入る量を増やし、従業員は残業なしの奨励で稼ぎが少なくなったため、どんどん辞めていき、今では1人を残すのみとなりました。

その1人も、山田さんのイライラが分かるのか、非常に居心地悪そうにしています。きっと、お客様にもそういう雰囲気は伝わっているはずです。

でも、山田さんはそのことに気づけません。本当なら暇なら暇をある意味生かして、巻き返し策を考えるべきなのですが、ちっとも前向きな気分にはなれません。

『減り続ける貯金のこと』で頭の中はすっかり占拠されています。

「上がり目がない」と判断できる場合には、遅くてもこの辺のタイミングでやめられるのが正しい経営者でしょう。

山田さんもそのことがちらりと頭をよぎりましたが、閉店した場合には残った借金が380万円、半年分の家賃保証の支払いが90万円で、貯金がほぼゼロになってしまう。

次の就職だってうまく行くか分からないし、友人たちにもメンツが立たない、と結局現状維持を選択してしまいました。

まだ、貯金がゼロになっただけなら、いくらでもやり直せたはずです。

【13~24ヶ月目】ついに、本当の終わりが来る

最終的に、オープン後13か月目から24か月目の売上は、月50万円になってしまいました。

経費は、家賃15万円、仕入15万円、水道光熱費10万円、借金の返済が10万円。その他雑費5万円の合計55万円です。

人件費はすでに全て削ってしまいました。お客さんも少なくなり、もうアルバイトは必要ありません。山田さんのみでも、十分オペレーションを回せてしまうからです。

とはいえ、朝から晩まで山田さん一人でフルに働くのは楽ではなく、家族サービスをよそに毎日骨身を削って働いても、それでも5万円の赤字なのです。

生活費も見直し切り詰めましたが、さすがに限度があります。

貯金はなんと50万円になってしまいました。

従業員も全員切ったので、休日も休憩もなく働き、家でもイライラしっぱなしで奥さんともケンカばかりです。ただでさえ苦しいのに、家でも衝突を避けるためにと店に泊まってしまうことも増えました。

税理士は随分前に、「コスト削減」のために契約を切ってしまいました。

今はもう、誰にも相談できません

今辞めたら、残りの借金260万円と家賃保証の90万円、合わせて350万円分の債務だけが残ります。何か巻き返し策を図るにも、先にお金がかかります。

かといって、手作りのチラシを作る気力はありません。居抜きで設備ごと売ってしまうような手もあるのですが、心身共に疲れ切っている山田さんには考える余裕がありません。

残念ながら、こうなったらもう事業としては終わりです。

正直なところ、ここで事業を断念する決断はだいぶ遅かった方ですが、「山田さんの人生」という視点で考えれば、遅すぎるということではありません。ここからなら、まだ3~5年くらいじっと我慢して働けば、借金も返し終わって何とかなるからです。

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【禁断の延長戦】ハイリスク・ローリターンの世界へ

でも、もしも、

「まだ何とかなるんじゃないか」

と惰性のように、さらに1年続けたらどうなることでしょうか。


山田さんは、銀行に追加の融資を申し込みましたが、税理士はいなくて確定申告もしておらず、返済には「遅れ」が数回あったことを理由に、審査すらしてもらえませんでした。

毎月の生活費は赤字のため、仕方なく消費者金融などから200万円借りました。

それも、半年持たずになくなりました。

今までは頼まなかった親には土下座をして、300万円借りることができました。

それにもかかわらず、半年も持ちませんでした。

消費者金融も親への借金も返す当てはありません。自分が全部でいくら借りているのかもよく分からないまま、ただ毎日の売上金をそのまま借金や仕入れなど未払金の返済に充てているだけです。

山田さんがコツコツと貯めて1000万円もあった貯金はなくなってしまったどころか、逆に借金ばかりが残り、バラ色だった夢もいつの間にか見ることをやめてしまいました。

そしてある日、ついに山田さんは突然行方をくらましてしまいました。

子供を抱えた奥さんは途方に暮れてしまいました。住宅ローンも維持できないので、自宅も最終的には差し押さえられてしまうでしょう。

山田さん名義の物件なので、各種手続きもままなりません。親にも借金をしているため、親のところにも行っていないようです。

もうどうしようもありません。

家族もバラバラになってしまいました。

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事業は撤退ラインも考えて始める(人生を壊さないために)

以上、ちょっと怖い極端なストーリーに思われたかもしれませんが、これは借金を背負って飲食店を始めるならば、実際に誰にでも起こりうることです。

さてこの中で、一番の問題は何だったのでしょうか。

売上予測を甘く見たこと?

いえ、違います。

それは、辞めるのが遅すぎたことです。
夢いっぱいで借金までして始めた自営業、すんなり辞める判断ができる人は多くありません。

でも、冷静に考える事さえできれば、あるいは、冷静に考えられる人が近くにいれば、もっと傷を浅く、再起可能な撤退を選ぶこともできました。

私は飲食店を潰した3か月の間に、業績が悪すぎた「おかげ」で、この景色をちらりと垣間見ることができました。

ここからどうテコ入れしようとも、復活する可能性はかなり低いであろうこと。そして、これ以上進めば、どんな地獄が待っているのかということ。

私の場合は、他に本業の収入があったため、ある程度ローリスクで開業することができました。なぜなら飲食事業が滞っても、毎月税理士業としての固定のキャッシュフローが約束されていたからです。

それなのに、それだけ安全に配慮しても、毎月20~30万円の赤字の事を考えると、心情的に気分が落ち込んで仕方がありませんでした。

これがもし、脱サラで借金と家族を背負って、一つの自営業に人生を賭ける意気込みで行って失敗してしまったら、私には耐えられなかったかもしれません。

少なくとも、絶対家族にも当り散らすか、接触を避けることにはなっていることでしょう。

以上、失敗のお話をお伝えしてきましたが、別に自営業の怖さの側面を植え付けたいわけではありません。

でも自営業は人生をかけた投資・勝負なわけで、どんなによく練り上げられた計画であっても、世の中に対して100%絶対に勝てるというものではありません。

もちろん最初から”勝ち”となればよいですが、運に左右されることもあるし、どんなに準備していても、”負け”となってしまうことはあります。

その時に、その一回目の結果にしがみついて致命傷を負うのは、不合理です。

たとえ、どんなに思い入れがあったとしても。

このことを私は伝えたいのです。

そんなとき、合理的な判断を下すためには、税理士というものは、非常に重要な役割を担ってくれるはずです。あなたが”社長”であるならば、あなたに耳の痛いことを言ってくれるのは、税理士くらいしかいないのではないでしょうか。

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