印紙のちょっとお得な話
最近、お客様のところで税務調査がありました。
お客様からも少し印紙の話題が出たので、忘れないうちに印紙のお話を。
そもそも、印紙って何?
印紙(収入印紙)は、
数ある税金の中でも(私の中では)特に存在意義の不明瞭なものです。
法人税や所得税・贈与税は、あなたが儲けたので課税します。
固定資産税や相続税は、資産を持っているから課税します。
これらは、まぁ、支払う方としては払いたくはないものの、徴収する側が何をしたいかは分かります。
では、印紙税はというと・・・
「重要な書類を作るなら、課税する」
???
・・・なんじゃそりゃ。
その書類の効力を、国が保証してくれるわけでもないのに。
印紙を貼るべき文書とは
印紙を貼るべき文書の種類は20種類で、ものすごく細かく決まっています。
さらにその内容によって、貼るべき印紙の額も決まっています。細かい種類はおいといて、自営業者が覚えておくべきものはだいたい次のものくらいでしょう。
・領収書(5万円以上)
・不動産の売買契約書
・各種請負契約書
・金銭消費貸借契約書(要するにお金の貸借)
・継続取引の基本契約書
ちなみに、「領収書であっても、個人が事業に関係ないところで発行するもの」については、印紙は不要です。
それから、どういう理屈かはよく分からないのですが、税理士や弁護士、医師の発行する領収書も印紙は不要となっています。
印紙の注意点
①業種によっては税務調査の重点項目
イケイケ社長も黙る『税務調査』において、不動産業や建設業、高額の領収書が発生する業種においては、印紙の有無は確実にチェックされます。
最近では、建設業や美容業関係で、節税のために「従業員を個人事業主にする」手法が流行っていますが、その契約書にも印紙を貼らないといけないので注意が必要です。
また、印紙の怖いところは、
「貼り忘れていたことが見つかった時に、ただ貼ればよいわけではない」ところ。
「あー貼り忘れていましたーー」
なんて、うっかりを装った不正をしやすいので、罰則も重くなっています。
具体的には、うっかりミスなら1.1倍、悪質なら3倍の税金が課せられます。しかも、税務調査で指摘された場合には、その全額が経費として認められません。
初めから素直に貼っていれば経費になるはずだったものが、チェックで指摘されてしまうと、税金(印紙税)は3倍になって、なおかつ、経費にもならないので、それなりのダメージになってしまうんですね。
②住宅ローン控除初年度や個人の不動産の売却時
念願のマイホームを購入し、住宅ローン控除の初年度や、個人で不動産を売却して確定申告をする場合には、「契約書のコピーを提出」を求められることがあります。
その時に、うっかり印紙を貼り忘れていると、速攻で税務署から突っ込みの連絡が入ります。
当然のことながら、印紙を貼った契約書を再提出するまでは、住宅ローン控除の還付金はおりませんのでご注意を。
③消印を忘れずに
印紙は、消印(割印)を行って初めて納付したことになります。
意外と忘れやすいようなので、これも注意してくださいね。
④名称を変えてもダメ
売買契約書や請負契約書という名称でなくても、「事実上同じような目的の文書」と判断されるような内容の場合は、印紙を貼らなくちゃダメです。
印紙税を逃れるために、書類の名称だけ勝手にいじくっても、税務署は見逃してくれません。
まぁ、これは当たり前ですね。そんなのは通用しません。
印紙のちょっとお得な話
①税込と税抜で印紙がいらなくなる
印紙税法では、『消費税込と消費税抜について指定』がありません。
そのため、印紙を必要とする契約書には、「消費税部分を明示」すれば、税抜金額で判定されることになります。
例えば、税込51,840円の領収書だった場合、
「うち消費税3,840円を含む」とわざわざ、はっきりと書いてしまえば、税抜48,000円での金額判定となるため、5万円未満の領収書なので印紙を貼らなくても良くなります。
②電子データやコピーには印紙がいらない
印紙税法では、印紙が必要となる場合として、「書面に残す場合」しか想定していません。
そのため、契約書をPDFなどの『書面の代わりに、電子データで済ます』場合や、『原本を1部しか作らなずに、もう片方をそのコピーとする場合のコピー(写し)』の場合には、印紙を貼らなくても大丈夫なんですね。
こんな感じです。
なんだか、抜け穴が沢山のような?
・・・ガバガバですよね。印紙って。
正直、今の時代にはそぐわない税金だと思っています。
いっそのこと印紙税の対象となる課税文書は、不動産や銀行融資くらいに限定してもらって、買主ではなくいつも業者の方で貼り付け義務を負わせるくらいにしないと、不正も起こりやすいし、チェックも大変ですよ。
ほんと、辞めてしまえばいいのに・・・。