自分の満足からで良い
「自分はいいから、従業員の給与を上げてやりたいと思っているんだ。」
お客様とお話ししていると、時々こんなことを耳にします。
人間的な立派さや倫理的に優れているとかなんとかはここではまったく触れずに、誤解を恐れずに言います。
はっきり言って、私はこの手の発言が大嫌いです。
法律違反なく、まず自分の利益を優先しよう
もちろん前提として、従業員に対する給与が最低賃金を下回っていたとか、残業代を出していなかったり、給与を遅配しているなど、事業として法律違反がある場合は全く別の話です。
そんなのは”ダメ”です。
すぐに社長の給与を取る前に、早く従業員の給与を「上げて」下さい。
そんな給与水準や労働条件、資金繰りでないと利益が出ない事業であれば、単純に経営者として無能であることの証明となります。
違法な方法でしか成り立たないような事業モデルは、そもそもお話になりません。
商売のうまく行かない人の思考パターン
私が大嫌いなのは、社長の「自分はいいから」という部分。
“商売”をやるのであれば、利益を目指すのは大前提です。
もちろん、ボランティアや本当に立派な志などで運営されているNPO法人などを否定しているわけではありません。なぜならそれらは、”商売”ではないからです。
“商売”をしているんですよね?
それなのに、なぜあなたはまず、じぶんの利益を取ろうとしないのですか?
私は中小企業(主に家族経営型)や個人事業をターゲットとする税理士ですが、小規模の事業にとっての”利益”とは、要するに自分の収入のことを指します。
私の中では当たり前の話ですが、まず利益が出ない商売に存在意義などありません。
このことは私の中では絶対だと思っています。大金持ちが趣味や社会貢献のみでやっているような、極一部の例外のことについては私は興味がありません。
「従業員の給与を上げてあげたい!」
その思いは大変素晴らしいものでしょう。
でも、社長から見れば従業員の給与は『費用』です。会社の『利益』とは構造的には相反しています。そのため、本質的には経営者と従業員は、絶対に分かり合えないのです。
私がこのようにある意味冷酷にハッキリとお伝えしてしまうのは、”人情”を重んじる社長の中には気に食わない方もいることでしょう。
もちろん、それは承知していますが、これが私の経験上からの見解です。
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税理士に建前を話す無意味さ
一方で、このような”人情”をはき違えることなく、
従業員の定着率を上げるために給与を将来への先行投資として捉えている場合や、勤労意欲を向上するための経営判断により給与アップを優先すること、または、みんなの前では「従業員優先の会社だ!」と言わざるを得ない状況がある場合。
こういうのは、十分にありえる経営的な選択肢だと思っています。
とどのつまり、最終的には、「お金で評価するしかない」ことは経営者も従業員もお互いに分かっているため、それをどう扱うかという問題からは逃げることはできません。
でも、逃げない結果が、
「自分は後回しで良い。」
こんなことを人情派気取りで言うのは”ダメ”です。
少なくとも税理士の前では、こんな建前のようなことを伝えるのはやめておきましょう。
(すでに莫大に利潤があってから、つぶやくのであればもちろん別ですが。)
成功者は自分の「利益」「欲」を隠さない
私の知る限り、成功している方というのは『欲』を隠しません。
時と場所は考えるとしても、例えば税理士である私と二人きりで話しているときに、建前であるような”お題目”、または”立派なこと”を言っても仕方ありませんよね。
もちろん、私がそういう人間なので、そのようなお客様が集まっている可能性はあります。
しかし、しかしですよ!
不思議なことに、自分の利益を優先しても、ある一定水準以上の成功を収めると、社長の口からは必ず従業員への還元の話が出てきます。
自分が満足しているから、従業員にもきちんと還元する。
感謝の気持ちをお金で表現する。
なので、
本当にまったく無欲で、自分よりもまず他人へ奉仕することが自分の幸せだと考えるマザー・テレサや他の聖人みたいな社長、
または、たまに存在する何か哲学的な思考をお持ちの変わった方、でもないかぎり、この順番でないと何か不健全だと思うのです。
自分が潤ってから、従業員にも潤ってもらいたいと思う。
また、自然発生した言動でなければ、ほとんどの場合、従業員からも見透かされているものです。お金で表現する以上の誠意はありませんが、従業員に媚びる必要もありませんよね。
もし、駄々をこねる従業員がいる場合には、
(マネジメントの観点からは絶対のNGワードですが、)
「じゃあ、独立して自分でやってみれば?」
これで一蹴できることでしょう。
以上のことから、あなたが自営業でリスクを取ってやっていく以上、まずは一生懸命、自分の利益を優先すべきです。それが自然なことですよ。
まずはとことん「欲」を追ってみて下さい。何も心配する必要はありません。