「節税には優先順位があります」
お客様と決算のミーティングをしていると、よく税金の話になります。普段はあまり喋らないような社長でも、決算時の税金の話になれば別のようです。
税金は頑張って生み出した貴重な利益より、実際のお金を支払うことになるため、当然どの方も、「なんとかして税金を払いたくない」ことになります。
そんな私自身もそう思っていますから、事業者としては当然のことなのでしょう。
「なんとか節税策を考えてもらいたい。」「税金を減らすウルトラCを教えてくれ。」など。
「とにかく節税=メリット」という誤解
しかしながら、節税に関してよく社長が誤解していることがあります。
それは「無理な支出」をしてでも経費を捻出して会社の税金を減らすことが、会社にとって最良の選択だと思い込んでいる点。
税金を減らすことに執着し過ぎて、かえって資金繰りを悪化させる可能性、リスクのことは、あまり頭にない方が多かったりするんですね。
たしかに税金は、利益に対して課せられます。
そのため、(税務申告上の)利益をうまく減らすことができれば、税金も少なくなります。
では、その利益を減らすには…
ということで考えるのは、
利益は、「売上-経費」で計算されていること。
まず、売上は他人が関わることなので、(基本的に)コントロールできない。
なので、自分がコントロールできるのは経費のみ。
というわけで、「じゃぁ経費を増やせばいいんだな?」と、短絡的にみんな考えてしまうようなんですね。
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節税のため手元資金を減らしてもOKですか?
以前に「保険に気をつけろ!」という記事で、
税金を減らすため安直に経費を増やすと、結果的に手元資金が減ることについて書きました。
関連 【節税のための保険】には、気をつけろ!「目的を見誤らないために①」
税金を減そうと、(必要ないのに)無理に経費として支出。
すると手元にお金がない…
法人税や所得税は利益に対して、%(パーセント)で計算されます。よって支払った経費全額分の税金を減らす効果はありません。
良く考えれば当たり前のお話。
一方で、どんなに税金が高くとも、稼いだ分全部持っていかれるわけではありません。
でも税金をゼロにしようすると、「利益をゼロ」にする必要があり、つまりは稼いだ分・利益を全部使わないといけなくなります。
この辺りの計算は、厳密には少々ややこしいお話なので割愛しますが、おおよそはこのような感じです。
それでは、節税のための支出にまったく意味がないのかといえば、もちろんそうではありません。
節税のために最適な提案こそ、我々税理士の存在意義であると私は考えています。
ただし節税には、いくつかの種類があります。
「節税はセッティングが8割」という記事でも書きましたが、実際の支出を伴う経費かどうか、決算月以後でもできるか等、他にもいろいろと判断基準があるのです。
節税の優先順位(無理な支出はおススメしません!)
私が決算間近のタイミングで、
じっさいに『想定以上に利益が出る事が発覚』したお客様に対する節税の優先順位は、以下のような感じです。
①今からでも間に合う節税の再設定を検討できるか。
(あくまでも事前セッティングが重要ですが。)
②来期に購入予定の物品やサービスがあれば、今期の購入をススめる。
(来期の経費は、また1年ゆっくり準備しましょう。)
③準備したとっておき”切り札”を今回使うか否かを尋ねる。
(切り札もセッティングが8割!先に仕込みありきですが。)
④それでも、どうしても税金を支払いたくない?
(資金繰りを悪くしてでも、保険などを頼りますか?)
ところで、以前より「絶対に押さえておきたい節税」シリーズの中には、決算ギリギリのタイミングでも使え、効果の大きい節税の切り札がいくつかありました。
関連 事業の節税カテゴリーへ
残念ながら、そういったウルトラCは毎回使えるものではありません。
なにせ「いざ!」という一回こっきりでしか使えないからこそ、
“切り札”と呼ばれるゆえんですので。
切り札は、来期あるいは数年間の業績予測をした上で、「今使ってしまっても問題ない」と思えるのであれば、選択肢として考えるべきです。
わざわざ無駄なお金を支払い、「経費を作って」税金を減らすのは、残念ながらあまり上手な節税策とは言えません。
以前の記事からの繰り返しになりますが、あくまでもなるべく正確な利益を把握、予想して前もって準備することが1番大事です。
その上で、それでもどうしても計画とズレてしまったら、先ほどの優先順位を思い出してみてください。