「税務署とケンカしないように…①」
ニュースで脱税関係のニュースがあるときに、企業からのコメントで、こんな言い回しを聞いたことがあるのではないでしょうか。
「解釈の相違があったが、当局と協議の結果、合意し、既に納税を済ませた。」
これはいったい、どういうことなのでしょうか?
グレーゾーンと「解釈の相違」
この企業からのコメントを、ちょっと私なりに解説してみましょう。
①「解釈の相違があったが、」
→合法的な節税だと考えていたが、税務署にダメだと言われた。
②「当局と協議の結果、」
→税務署とやり取りした結果
③「合意し、」
→勝ち目が薄い、あるいは、ケンカしてもしょうがないと考えて
④「既に納税を済ませた。」
→仕方なく税金を支払った
ちょっと笑えます。
つまり、
「悪いことするつもりじゃなかった。」
「もう言われたとおりに税金も払ったから、これ以上追求しないでね」
ということ。
もし、税金を違法に逃れようとしたなら、それは脱税です。
これは、「クロ」。
いわゆる正当な節税は、何も問題ありません。
もちろん「シロ」。
では、形式的には合法なはずだが、金額や適用範囲で前例がないほどやりすぎてしまって、税務署と論争になってしまった場合では?
こちらは「グレー」ですね。
これを企業側が精いっぱい強がって、それっぽく表現すると冒頭のような「解釈の相違」といった表現となるわけです。
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租税訴訟は、ほぼ「勝ち目のない戦」
さて、もし節税の要件を「企業側の勘違い」ならこれはもちろん、納税者側のミスなので勝ち目はありません。
しかしながら、「解釈の相違」である場合では、一応要件は満たしているはずで、税務署とも争うだけの余地がありそうなものです。
それなのに、なぜ諦めてしまうようなケースがあるのでしょうか?
それは、租税訴訟は「ほぼ確実に負ける」から。
租税訴訟については、国税庁のホームページに概要が公開されています。
「平成28年度における訴訟の概要」
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2016/sosho/index.htm
これは納税側ではなく、国税側から見た数値となっています。
例えば平成28年度の場合、結審した訴訟が245件あるうち、納税者側が全部又は一部勝った案件(国税側の敗訴)は、たったの11件であることが分かります。
ということは、確率にして…
ナント、4.5%という低さ!
たまに大きな案件で、「国税が負けた!」とニュースになることもありますが、国税側の敗訴率4.5%(納税者側の勝率4.5%)という数値は、実質的に訴えても「ほぼ勝てない」勝負と言っても過言ではなさそうです。
税理士の仕事は税務署に「勝つ」ことではありません
初めから負けが濃厚で、顧問税理士も腰が引け気味。
時間もお金もかかるし、今後税務署にもにらまれそう。
さらには、対外的なイメージも悪化しそう…。
これでは、正直、ためらうというか、諦めてしまいたくなる気持ちも分かりますね。
ということで、税理士の基本姿勢はこうなります。
「税務署につつかれそうな節税はしない。」
私もこのブログで散々偉そうな事を言っていますが、基本的には同じです。
あくまでも、
「事前準備をしっかりやることで、そもそも税務署とケンカにならない方法で、お客様の求める結果にアプローチする」
のであって、
ギリギリの節税方法を使って、たとえ税務署に指摘されそうでも、”戦う気満々”で税務調査に挑むようなことは、決してありません。
では、税理士はどのようにして、そのような判断を行うのでしょうか?
次回の記事に続きます・・・