「台風の季節に思い出す怪しい物件にまつわる話②」
前回は、
『購入した高利回りのオンボロ物件に、隣地の地主からクレームがきた』
というところまでお伝えしました。
この瞬間から、その物件はドル箱から悩みのタネに変わってしまったのです。
ボロアパートを経営するリスク
内容証明を受け取り、カーっと血が沸騰しそうになった私でしたが、ありがたいことに私の職業は税理士です。仕事柄、不動産屋や弁護士の知り合いはたくさんいます。
一旦自分の気持ちを落ち着かせて、第三者であり、何より専門家である彼らに相談することにしました。
こういう時、相談相手がいるというのは本当に心強いものです。
しかしながら、相談の結果はというと、残念ながら「普通にやり合っても負ける」ということが判明しました。
購入したボロアパートは本来的に『危ない物件』であることは事実ですし、何よりそれを承知で購入したのです。
「負けるのは嫌だ」からと言って、税理士という立場上、変なごね方や放置もできません。
「危ない物件」を収益物件に変えるために
なので、ここで作戦変更です。
まず、擁壁を建替えたら、いくらかかるのかを「調査」に入りました。
そうしたらナント、1,000万円はかかることが分かったのです。
しかも建物がボロすぎるため、まず建物の取り壊しが必要で、擁壁の建替え工事自体だけというわけにいかないとも。
ということは、「建物は新築するしかない」。
建物はもともとボロボロだから諦めるとして、さらに1,000万円もかけて擁壁の建替えはやりたくないなぁ…。
そんなことをしたら、せっかくバカ安で買えたメリットが完全に吹き飛んでしまいます。
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ボロアパートを救い出すための戦術
まだまだ私は諦めませんよ。
複数の建築士を回り、『擁壁の建替え無しで、建築基準法を満たすことができないか』相談しました。その結果、基礎工事を工夫することで合法的にハードルをクリアーできることが判明したのです。
一筋の希望の光が見えたことには多少なりとも「ホッと」したものの、まだまだ問題は終わりませんでした。
それが決まったら、次は「融資」が必要です。
建替えするにも融資がつかないと身動きが取れません。
何しろ一案件で1億円近い融資であるため、さすがに銀行担当者の方も苦労していたようです。でも、私の税理士としての本業が順調であることもあり、なんとか乗り切ることができました。
こういう時、まじめに仕事していてよかったと感じますね。
最後の課題は、現入居者の「追出し」です。
『建物が危ないから新築します。』ということを居住者の方々に通達し、同時に『早く出て行ってくれたら引っ越し費用を出します』キャンペーンを打ちました。
このような身を切った施策にも関わらず、実はここにはなかなか手こずりました。なんと、全員が退居いただくのに合計6ヶ月もかかったのです…
しかも、その6ヶ月の間に、なんと台風がやって来たんです。
それも、TVのニュースなどで、まず上陸した西日本で大被害が報告されているような台風が。
台風でアパート損壊リスクで夜も眠れず
それまではマンションの一室(区分所有)ばかり買っていたので、台風の影響や被害などはまったく気にしたことがありませんでした。
それが今回は、ぼろぼろ木造で、もう取り壊しも決まっているアパートです。
このところ、何かと問題が発生している最中でもあったため、
連鎖的に私の頭をよぎったのが、
「追い出しが終わるまでの間に、大雨で地盤がゆるんで建物ごと流されたり潰れたりしてしまったらどうしよう。」
「その結果、どなたか亡くなってしまったらどうなるんだ?」
「損害賠償は免れないだろうな。」
「そうすると、いったいいくらかかるんだ?」
「1億円くらいかかったりして…そうなったら破産だ!」
(居住者の方の身の危険のみならず、自分のリスクに心奪われてしまっていたことについては、私の当時の余裕の無さを垣間見る思いです。)
とにかく、本当にびっくりするくらいボロボロアパートですから、どんなに贔屓目に見ても大家の責任がないとは思えません。
購入時に「高利回りの激安物件を手に入れた」ことばかりに気を取られ、まったく気にもならなかったことが、ひとまずリスクを認識してからは、あとは怖くて怖くて仕方ありませんでした。
【さらにつづく】