「台風の季節に思い出す怪しい物件にまつわる話③」
前回までのあらすじです。
ボロボロのアパートを購入し、不動産オーナー税理士となった私。
でも16%という期待利回りの高さから、期待していた”美味しい思い”を実感する前に、隣地から強烈な苦情を受けて調査をすることに。
結果、仕方なく新築に「建替える」ことを決定。
でもって今度は、ぼろアパートの住人の追出しがうまく行かずに、時間だけが経過していきます。
本業以外の事業については、詳しくは伝えていない妻。
そんなことを相談できるわけもなく、「台風襲来で建物と住人がどうかなっちゃうんじゃないか」と、心配で一人眠れない夜を過ごしていたのでした。
美味しい話にすぐに飛びつくべからず
よくニュースでは、農家の方などが台風の日に田んぼを見に行って、水害に巻き込まれたりすることが報じられたりします。
不謹慎ながら、今まではそういうのを見て、
「なんでわざわざ台風の日にそんなところ行ったのかなぁ」
「どうせ台風が来てからじゃぁ、有効な対策なんて打てないだろうに…」
と疑問に思っていました。
ところが、今ならよく分かります。
人間は本当に不安に駆られたとき、どんなに危なかろうが、
自分の目で確かめずにはいられない。
とても、
「どうせ流されるなら、見に行ったって変わらないさ」
なんていう合理的な判断なんて、できない。
結局私は、夜中にレインコートを着込み、雨風強風の中をヨタヨタと原付を走らせて、ぼろアパートが”流されて”いないかどうかを確認しに行ったのです。
今思えば、我ながらばかばかしい話です。
でも結果は…流されてはいませんでした。
よかった、よかった。
その後は、時間はかかりながらも居座り続けていた方の追い出しも何とか完了し、アパートは新築として生まれ変わりました。
とりあえずは、「めでたしめでたし」で事態を収束させることができました。
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“失敗”から私が得た教訓
さて、私がこの経験から得られた教訓は何だったかについて考えてみました。
自分の力の及ばないところで、自分の人生を左右されているこの感じ。
この崖っぷちで”悪い目”が出てしまえば、たった一撃で私の人生が破たんするダメージを被るであろうことを、ヒシヒシと顔横に感じているこの感じ。
もちろんこのような思いは、もう二度と経験したくありません。
しかしながら、何とか乗り越えた今となっては、私の貴重な財産(鉄板ネタ)ともなっています。また、この修羅場を経験したことで、一回り肝が据わった気もしています。
わたしはこのような経験を踏まえ、お客様や仲間が軽い気持ちで不動産投資に興味を持つときは、嫌がられようとなんだろうと、
「きちんとアイデアがあるんですか?」
「勝算があるんですか?」
と、横槍を入れるようなことを口うるさく言います。
この修羅場を経験していなかったら、説得力や迫力をもって伝えることは難しかったことでしょう。
私が改めて学んだこと。
それは、不動産投資以外も同じですね。
常に語っていることですが、世の中にうまい話なんてありません。
なので私は、お客様が訳の分からない儲け話にフラフラと乗せられそうになっている際には、不動産投資と同じように、あえてゴチャゴチャと水を差すようなことばかり言います。
せっかく乗り気で、税理士も背中を押してくれると思っていたのに、私が嫌なことばかり言うのですから、相手は当然苦虫を噛みつぶしたような顔になります。
私の場合はさらに、「その営業マンに合わせてくれ」「絶対に言い負かしてやるから」と鼻息を荒くするのも仕事の一つと考えています。
少なくとも、そこで一歩立ち止まらせないようでは、自分にお金を払ってもらっている意味がない。
その上で、それを乗り越えてでもやりたい熱意と、勝算があると思うのであれば、後はどうぞ、ご本人の決断次第です。
税理士の存在意義
あなたの税理士はそういった意味で、きちんと修羅場をくぐっていますか。そういった時に、自分の気持ちを理解してくれているのでしょうか。
お客さんの話を聞いていると、きっとそういう税理士はそんなに多くはないんだと思います。
「嫌なことでも、相手に必要なことだからあえて言う。」
普通は、社長に厳しいことをストレートに言ってくれる人は、なかなかいません。
だから、私はきっと”食いっぱぐれない”のだろうと思っています。