「税理士にとっては個人事業主よりも法人の方が割が良い②」
前回からの続きです。
開業税理士からすれば、個人事業主の方は、税理士に対する報酬を思うほど払ってはくれません。
その結果、お客様の満足度が下がってしまうことがあるのですが、それはお互いのコミュニケーション不足による、「不幸なすれ違い」とも言えます。
ここには、いったい何が起こっているか、もう少し詳しく見ていきましょう。
Contents
税理士はなぜ個人事業主から十分な顧問料を得られないのか?
①法人の方が税理士に対する予算が高い
個人事業主は、開廃業が楽で設立や登記のコストがかからずに気楽な一方、法人と比べて、節税しずらい特徴があります。
ということで、個人でやっている医師や弁護士、大地主等の一部を除いて、ほとんどの個人事業主は「コストをかけて法人にするほどには儲かってはいない」、というのが現実です。
そのため、儲かっていなければ税金があまりかかりませんから、節税に対するニーズも満足感も低くなります。
税理士の仕事はあくまでも「手間賃」としてしか感じられないことがあるでしょうし、現実的に「安い金額しか出せない」と率直におっしゃる方もいます。
②個人事業主の確定申告は自分でもできる
個人の確定申告は、ちょっと事務の得意な方なら、自力できないこともありません。
それに実は、事業が儲かっていなければ、少々雑な申告でも、結果的にトラブルが出ないことも多いんです。
なので、自分でもできるような内容に、「あまりお金をかけたくない」と思われてしまうのも、仕方のないことなのかもしれません。
一方で法人の決算書は、個人の確定申告書と比較して紙の枚数だけでも5~10倍にもなります。
書類の種類や用語も難解になり、自力で作成することは素人には難しすぎます。
(ちなみに、自力で作業して申告されたという確定申告のうち、十分なクオリティのものを、過去に1人だけ見たことがあります。それでも「節税」に関する観点が抜けていたために、「節税」としては失敗していました。)
③決算時期が集中する
税理士の仕事は季節商売です。
一般的に12月の年末調整頃よりバタバタし始め、5月まではずーっと忙しいです。
法人の場合、決算月の設定は任意ですから、設立時期やお客様の好み、節税の必要性などによって、決算月はそれなりにばらけてくれます。
ところが個人事業の確定申告は、自動的に12月決算の3月15日までの申告期限に決まっています。
このため税理士にとっては、仕事を分散して均等にすることが実質不可能になります。
いかに個人事業が法人よりも作業ボリュームが少ないと言っても、ただでさえ忙しい時期にそれなりの数が増えれば、どうしても手間がかかります。
④顔を合わせないと満足度は下がる
個人事業主でも法人でも結局ビジネスはヒトとヒトですよね。
十分なコミュニケーションを取っていれば、かなりの確率でトラブルは回避できると思います。
しかし税理士の顧問料の本質は、人件費です。
となると顧問料を安くしたい個人事業主の方は、基本的に契約内で会える回数は少なくなります。
思い切って会いたいと言っても、露骨に嫌な顔をされたり、日当を要求されたり、などのトラブルは時々聞きます。
開業税理士の裏事情まとめ
さて、開業税理士目線で、グチグチと書いてきましたが、いかがだったでしょうか?
さほど顧問料をもらえないのに、絶対に忙しい時期に仕事が集中する。
おまけに、法人と同じ水準のコミュニケーションを要求されがち…。
一部の税理士が、個人事業主の方に対して腰が引けていても、私は責められません。
じゃあ、私はどうなんだと言われてしまいそうですね。
私の場合は、紹介でしか仕事を取らないため、紹介されればどんな方にでも会います。
ただ、私が提示する顧問料では納得いかなそうな方、たとえば「事業規模が小さすぎ」であったり、「儲かるイメージが湧かない」という場合には、自分で確定申告したらどうですか、と勧めてしまいます。
私のように節税が得意な税理士であれば、儲かっている方に対しては、最大のパフォーマンスを発揮します。
あなたが儲かっていれば、節税上の必要性から自然と個人事業主から法人に切り替えることになります。
そうすると税理士の顧問料も上がることになり、お互いにハッピーです。あなたが、もし今の税理士との関係性に不満を持っているのなら、そういう将来性を税理士にアピールしてみるのも良いかもしれません。